トイレのトナラーに恐怖…隣に入る心理や対処法を専門家に聞いた

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電車で席がガラガラに空いているのに、あえて誰かの隣に座る人は、「トナラー」と呼ばれます。SNSでは、電車以外にも、飲食店やスポーツジム、サウナ、駐車場など、様々な場所で「トナラーに遭遇した」という投稿が見られます。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」にも、公共トイレでトナラーに遭ったという女性から体験談が寄せられました。なぜ、わざわざ隣に来るのか。トナラーの心理について、日本ビジネス心理学会副会長で心理学者の匠英一さんに聞きました。

たくさん空いているのに隣のトイレに入る人

写真はイメージです
写真はイメージです

「たくさん空いているトイレで隣に入る人」のタイトルで投稿したのは、トピ主「とっと」さん。「映画館や道の駅などのトイレの数が多い場所で、どんなに空いていても私が入った後、すぐ隣に入られることが度々ある」と打ち明けます。トピ主さん自身は、たくさん空いている場合、わざわざ誰かが使用している個室の隣には入らないため、「隣に入る人の気持ちを聞いてみたい」と、発言小町に意見を求めました。

このトピに対し、トピ主さんと同じ経験があるという人からのコメントが寄せられました。

「通りすがり」さんは「私は、どこでも隣に来られるのが嫌なので、絶対に誰も来ない場所に行きますが、私が1番奥のトイレを選んでも、わざわざ隣に入る人もいます」と証言。「マドレーヌ」さんも「個室が20くらいある広いトイレで、私しか入っていない早朝や夜遅くに、わざわざ隣のトイレに入る人がいると怖いです。ひょっとして痴漢? 上からのぞかれてないよね? と何度も確認してしまいます」と、不安におびえた体験を語ります。

一方、「ooober」さんは「トイレの個室の隣に人がいるかどうかなんて、気にしたことがありません」ときっぱり。「空いているから入って用を足したいだけなのに、隣に入られた! とか、音がどうだとか、そんなことを意識されていると思うと、正直気持ち悪い」と感情をあらわにします。

また、「誰かの隣ということより、一番汚れていないトイレを使うことを優先しているのかもしれない」(「わん」さん)、「トイレを急いでいるから、入口近くから埋まっていくのだと思う」(「ぷ~パン」さん)などと、トナラーの心理についても様々な考察が飛び交いました。

自分の居場所だと認識する場所へ行く

匠さんは「トイレに限らず、どこであってもトナラーと呼ばれる人は、全体がどのくらい空いているかを見ずに、自分の居場所だと認識する場所へ向かいます。そして、その場所が空いていなければ、その近くに意識が向きます。トイレにおいても、自分の居場所だと認識している位置があり、それが一番奥なのか、手前なのかは人それぞれ。居場所であるトイレが使われていたら、その隣のトイレが自分の居場所の位置に一番近いため、そこに入ってしまうのです」と解説します。

様々な場所の中でも、とりわけトイレは日常的に使用する場所なので、「習慣性が強く、自分の居場所感覚を持つ人が多いと思います。また、プライバシーの強い場所なので、トナラーに遭遇した被害者も敏感になりやすく、ささいなことでも強い嫌悪感を抱きやすい」と匠さんは説明します。

トナラーに遭遇した場合、電車の座席などであれば、移動することで回避できますが、トイレの場合だと、それは難しいでしょう。「隣に来られるのが嫌なのは音を聞かれるからという理由であれば、流水音で音をかき消すという方法があります。また、隣に人が入っていることを意識せずにトイレに入ってしまう人もいると思うので、『自分が入っているよ』と知らせるための合図としても流水音は効果的です。壁をトントンとノックする人もいるようですが、相手を不快に思わせてしまう可能性があるので、おすすめできませんね」

増えているトナラー被害

“トナラー被害”は様々な場所で発生していますが、その理由について匠さんは、「人の隣に来る人は、相手がどう思うかを考えないタイプの人が多いと思います。認知の特性で、パーソナルスペースを侵したり侵されたりすることに無頓着な人もいて、年々増えているのは事実です。10人に1人は、そうした概念が希薄だということを理解したうえで行動した方がいい」と助言します。

また、「トナラー」という言葉が社会に浸透したことで、被害者側も敏感になっていると匠さんは指摘します。「4年前くらいから使われるようになりましたが、言葉にすることで、その行動自体に注意が向きやすくなる傾向があります。ささいな行動にも『これがトナラーか』と意識し、以前よりトナラーが増えたかのように感じてしまうのです」

匠さんは、トナラーを増やさないために、「隣に行く人も、隣に来られた人も、相手の状況を理解しようとすることが大切」だと言います。「例えば、職場内でクーラーの風が当たって寒いから、当たらない場所へ移動しただけなのに、トナラーだと思われてしまうことがあります。そういった場合は、『寒いから移動します』と理由を伝えるなど、周囲とコミュニケーションを取ることです。逆の場合でも、『この人はトナラーだ』と決めつけず、隣に来る理由があったのかもしれないと考えることが必要です」

(読売新聞メディア局 長縄由実)

【紹介したトピ】
▽たくさん空いているトイレで隣に入る人

プロフィル
匠 英一( たくみ・えいいち
1955年、和歌山県生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て同大学医学部研究生修了。1990年に株式会社認知科学研究所を創設。専門である認知科学の立場から無意識や直感、しぐさ、消費者行動の働きを研究し、それを軸にした人材開発、コーチング、組織改革、マーケティングなどを行う。著書に『「認知科学」最強の仕事力』(高橋書店)、「仕事の厄介な問題は心理学で解決できる」(河出書房新社)など。

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5704867 0 大手小町 2024/08/22 15:00:00 2024/10/21 11:09:11 /media/2024/08/20240820-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

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