猛暑ヤバい!熱中症を避けるためハンディファンより有効な4つの対策
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近年、日本の夏は「災害級」とまで言われる猛暑が当たり前のようになっています。気象庁によると、今夏も厳しい暑さになると予想され、熱中症にならないよう細心の注意が必要です。この過酷な夏を乗り切るには、どうしたらいいのでしょうか。「猛暑対策BOOK 日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!」(小学館)の著者で、運動生理学が専門の筑波大学准教授の藤井直人さんに、猛暑対策について聞きました。
危険な暑さで人の体はどうなる?

消防庁の調べによると、やはり猛暑に見舞われた2023年5月から9月までの間、熱中症で救急搬送された人は全国で9万1467人に上り、前年同期より28.8%も増えました。猛暑になると、なぜ熱中症を引き起こすのでしょうか。
人間の体温には、体の外側の「皮膚温」と、内側の「深部体温」があります。皮膚温は環境の変化に影響を受けやすく、一方、深部体温は一定(37度前後)に保たれるように調節されています。
熱は温度の高い方から低い方へ移動する性質があり、気温が皮膚温より高くなると、外気の熱が体内に流入して、体温が上昇します。体温が上昇すると人は、汗を出し、その気化熱によって、上昇した体温を下げようとします。しかし、外気温が高く、湿度も高い場合には、汗が蒸発しにくく、熱が体内にたまります。体にたまる熱が過剰になると、深部体温が大きく上昇し、熱中症を引き起こしてしまうのです。
「そもそも熱中症とは、一つの症状を表す疾患ではなく、意識障害や失神、けいれんなど、暑さを原因とする様々な症状の総称です。軽い症状であっても、容体が急変することがあるため、適切な予防と対処方法を知ることが大事です」と藤井さんは説明します。
日本救急医学会が策定した「熱中症診療ガイドライン2015」によると、熱中症では以下のような症状が表れます。
【熱失神】めまいや一過性の意識消失<重症度1度>
【熱けいれん】痛みを伴うけいれん<重症度2度>
【熱疲労】脱力感、
【熱射病】意識障害と高体温(深部体温40度以上)<重症度3度>
熱中症は軽症から重症まで、1、2、3度の3段階で分類されます。1度は発症した現場で対処が可能な病態、2度は速やかに医療機関で受診することが必要な病態、3度は採血、医療者による判断によって入院(場合によって集中治療)が必要な病態を指します。
もしも重症の熱中症(熱射病)になった人がいたら、どうすればいいのでしょうか。藤井さんは、いち早く体を冷やしてあげる必要があるといいます。
「熱射病の場合は、深部温度を下げなければならないので、冷水か氷水に体を浸すのが最も効果的です。用意できるなら水風呂へ浸し、そうでなければ、水で濡らしたタオルを体中に貼り付け、冷却します。タオルは何度も取り替えて深部体温が38~39度になるまで冷やし続けましょう。。熱射病の場合、意識がもうろうとしている状態で水を飲ませようとするのはかえって危険です。体を十分に冷却したあとで意識が回復してから、水分や電解質(塩分など)を補給しましょう」
猛暑対策4つの基本

藤井さんに、猛暑の夏を快適で安全に過ごすための4つの対策を教えてもらいました。
【1】水分を補給する
喉の渇きだけに頼らず、尿の色や体重を参考にします。尿の色が濃い場合は脱水症の兆候です。短時間で体重が1%以上減少した場合も脱水症の可能性があります。水やお茶は吸収が速いものの、すぐに排出されるので、少量のナトリウムが含まれている飲料がおすすめ。
【2】体温を下げる
冷水に体を
【3】暑さに体を慣れさせる(暑熱順化)
無理のない範囲で運動したり、温浴やサウナに入ったりして、暑さに体を慣れさせます。汗を長時間たくさんかくと、暑熱順化が起こりやすくなります。
【4】感覚的に冷やす
冷水やメントールなど、ひんやりするものを肌にかけます。日傘には、日射を避け、体温上昇を少し抑える効果があります。ハンディ扇風機やネッククーラーといった猛暑対策グッズは、快適度は上がりますが、体温を下げる効果は期待できません。
藤井さんは「徐々に体を暑さに順応させる暑熱順化は、熱中症の予防にも効果的です。1週間ほどのトレーニングによって暑熱への耐性を上げられるので、おすすめです。順化は発汗状態を長時間維持することで起こり、いったん順化すると、しばらく効果が持続します。無理をせず、汗ばむ程度の散歩から始めてください。低めの温度の風呂に浸かるのもいいでしょう。順化すると汗をかきやすくなって体温が下がり、暑い中でも活動しやすくなります」とアドバイスします。暑熱順化のトレーニングは毎日行う必要はなく、1~2日おきでもいいそうです。
ペットだって猛暑はつらい
猛暑の季節には、大切な家族への目配りも必要です。高齢者は体温やのどの渇きを感知する能力が衰え、幼い子どもは体が小さいため体温が変化しやすく、自分で気づかないうちに熱中症になる場合も少なくありません。藤井さんは「暑い日は注意深く様子を観察するなど、サポートが必要です」と注意を促します。
また、熱中症のリスクは人間だけではありません。汗をかけないペットたちにも、猛暑対策が必要です。とりわけ屋外での散歩や運動が欠かせない犬は、体が地面に近いため、地面から放出される「
犬や猫以外のペットの場合、体の小さな動物ほど、短時間で急激に深部体温が上昇します。日中、部屋の温度が上がりすぎないよう配慮が必要です。ペットを残して外出する場合は、部屋の温度管理や水分補給の対策をしましょう。
夏本番はこれから。暑さに強い体を作り、しっかり熱中症対策をして、猛暑を乗り切りましょう。
(読売新聞メディア局 後藤裕子)


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