【冬の特別編】東北写真館・後編…ドローンから見た「今年」

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東北総局写真記者 永井秀典

 冬の特別編として、2回にわたってお届けする東北総局・永井秀典カメラマンの「東北写真館」。後編は「ドローンから見る東北」をテーマとした。近年、物資の輸送や建設現場での 進捗(しんちょく) 管理、農薬散布など、様々な分野での活用が目立つ小型無人機(ドローン)は、日々の取材の現場でも活躍している。従来の空撮写真はジェット機やヘリコプターから撮影したものが基本だったが、ドローンはそれよりも低い高度で被写体に迫ることができる。ドローンから見た今年の東北の景色をお楽しみいただきたい(写真はいずれも特別な許可を得て撮影)。

大小様々な島が点在する松川浦(右)と太平洋(9月26日)
大小様々な島が点在する松川浦(右)と太平洋(9月26日)

福島・松川浦…震災から復興を遂げた景勝地

 福島県相馬市にある景勝地・松川浦。河口部に砂などが 堆積(たいせき) して堤防となり、外海とは切り離された県内唯一の 潟湖(せきこ) である。南北の長さ約7キロ、最大幅約1・5キロの浦内には大小様々な島が点在し、風光 明媚(めいび) な景色を作り出している。

 空から見てみると、太平洋と松川浦を隔てるまっすぐな堤防の様子がはっきりと分かる。堤防上には市道が延びており、ドライブやサイクリングにはもってこいである。

 東日本大震災では松川浦にも巨大な津波が襲い、堤防の大部分が破壊されるなど甚大な被害を受けたが、地元建設業者や応援の自治体職員らの協力で2018年4月に復旧工事が完了した。

 全国有数のアオサの養殖地でもあり、最盛期を迎える冬から春には鮮やかな緑色の 海苔(のり) 棚が浦内に広がる。

山形・羽黒山五重塔…20年ぶりの輝きを放つ国宝

約20年ぶりに屋根のふき替え工事が行われ、輝きを放つ国宝「羽黒山五重塔」(9月19日)
約20年ぶりに屋根のふき替え工事が行われ、輝きを放つ国宝「羽黒山五重塔」(9月19日)

 山形県鶴岡市にある出羽三山神社の国宝「羽黒山五重塔」(高さ約29メートル)で、約20年ぶりに屋根のふき替え工事が行われた。神社によると五重塔は平安時代に平将門が創建し、室町時代に現在の形に再建されたと伝わる。中世の建築様式が色濃く反映された建造物だとして、1966年に国宝に指定された。

 屋根は、薄い板を細かくずらして並べる「 (こけら) ぶき」という日本独特の工法。周囲が杉の木に囲まれていることなどから、風があまり吹かず湿度が高くなり、屋根板にこけが生えたり、落下した杉の枝で穴が開いたりしていた。約15万枚のうち約13万枚が取り換えられた屋根は、朝日に照らされて美しい輝きを放っていた。

福島・中瀬沼…水面に浮かぶ幻想的な紅葉

水面に浮かび上がる黄色やオレンジ色に染まった紅葉(10月31日)
水面に浮かび上がる黄色やオレンジ色に染まった紅葉(10月31日)

 磐梯朝日国立公園の裏磐梯地区に位置する中瀬沼(福島県北塩原村)。磐梯山を望む沼には1周約30分の探勝路が整備されており、珍しい高山植物や自生する草木、鳥のさえずりを楽しむことができる。

 紅葉の名所でもあり、上空から見た濃い青色の水面には黄色やオレンジ色に染まった木々が浮かび上がり、美しいコントラストをなしていた。展望台からの景色も絶景で、四季折々の表情が訪れる人たちを迎え入れる。

宮城・やくらいガーデン…咲き誇る秋のストライプ

 宮城県加美町にある観光庭園「やくらいガーデン」では、なだらかな丘一面に秋の花々が色鮮やかなストライプを描いて咲き誇っていた。

なだらかな丘一面に咲き誇る色とりどりの花々(9月5日)
なだらかな丘一面に咲き誇る色とりどりの花々(9月5日)

 園内に広がる約5ヘクタールの「ふるるの丘」では、サルビアやマリーゴールドなど約16万株がそれぞれ帯状に植えられている。

 丘の緩やかな傾斜は空から見ても美しい立体感を生み出しており、鮮やかな色合いをより引き立たせていた。

福島・岩瀬牧場…トウモロコシの巨大迷宮

 福島県鏡石町と須賀川市にまたがる「岩瀬牧場」のトウモロコシ畑には、夏限定で巨大迷路が登場する。

 約1・2ヘクタールの広大な畑には、大人の背丈を優に超える高さ3メートルほどの飼料用トウモロコシがそびえ立つ。

 来場者は全長約2キロにも及ぶコースを縫うように進み、ゴールを目指す。子どもたちに夏の楽しいひとときを過ごしてもらおうと、4年前から行われている。巨大ながらも精密に作られたコースが緑一面に張り巡らされていた。

トウモロコシ畑に広がる巨大な迷路(8月21日)  
トウモロコシ畑に広がる巨大な迷路(8月21日)  

宮城・出島大橋…構想40年、島民らの悲願の橋が開通

 宮城県女川町の離島・ 出島(いずしま) と本土を結ぶ全長364メートルの「出島大橋」が12月19日に開通した。

離島の出島(右)と本土を結ぶ全長364メートルの「出島大橋」(11月22日)
離島の出島(右)と本土を結ぶ全長364メートルの「出島大橋」(11月22日)

 本土と出島の距離はわずか300メートルほどだが、これまでの交通手段は本土の女川港と島を結ぶ1日3便の離島航路に限られていた。

 東日本大震災では、漁港近くに立ち並んでいた住宅が津波にのまれ、多くの犠牲者が出た。震災前は500人ほどだった人口も現在では約90人と、急激な人口減少も進む。橋の開通により、町中心部と車では約15分で行き来できるようになり、生活利便性の向上や交流人口の増加も期待される。

 橋の構想計画が出てから約40年、島民らの悲願の橋が架かった。

プロフィル
■永井秀典(ながい・ひでのり)
 1997年生まれ、千葉県出身。2020年入社。東京本社勤務を経て24年6月、東北総局(仙台市)に着任。写真記者として東北6県での撮影を担当。幼い頃の夢はパイロットで、学生時代は空港でアルバイトをしていた。現在は駆け出しの「ドローンパイロット」として、空からの景色を楽しむ喜びをかみしめている。

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