珠洲の伝統つなぐ若い力 大谷町移住者ら きょう2年ぶり「鯉のぼりフェス」
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昨年の能登半島地震と豪雨で二重被災した珠洲市大谷町で4日、伝統の「
約190匹の色鮮やかなこいのぼりが春風に吹かれて空を舞う、同市立大谷小中学校近くの空き地。イベントの開催を翌日に控え、坂口さんはテントやテーブルの準備に追われていた。約40人のボランティアや地元住民の中心で「手が空いている方、お願いします」と呼びかけ、周囲の人からは「幹事長!」と親しみを込めた声が響く。
千葉県出身で俳優をしていた坂口さんは昨年4月初旬、地震で集落の孤立が相次いだ大谷町を訪問。災害ボランティアとして避難所の炊き出しなどを行った。
多くの地域住民が避難生活を強いられる、被災地の過酷な状況を目の当たりにし、「胸の痛い情報が多くてショッキングだった」と振り返る。支えとなったのはベテランのボランティアから聞いた「長く来るのが一番の支援」という言葉だった。
その後も毎月のように通い、昨夏は避難所で誕生日を祝ってもらった。住民の優しさに触れ、昨年10月、「復興に付き合います」と大谷町に移り住んだ。
住民と一緒に生活をするようになると、「こいのぼりはいつできるんやろな」という声を何度も聞いた。大谷川の上に約450匹のこいのぼりを飾る「大谷川鯉のぼりフェスティバル」は、40年前から続く春の風物詩。誰もが地域の宝として、楽しみにしていた。
昨年は地震の影響で中止となり、今年も会場の大谷川では工事が続く。地元住民による運営団体「一歩の会」で事務局長を務める吉原忠男さん(74)も「会員は平均で70歳以上。こんな状況では開催できない」と諦めかけていた。
そんな中、坂口さんが所属するNPO法人「外浦の未来をつくる会」が場所を変えた開催を提案。同会の若者たちと一歩の会が協力し「大谷鯉のぼりミニフェスティバル」として再開にこぎつけた。
吉原さんは「若い人たちが協力してくれて感無量。できるならずっと続けてほしい」と話し、坂口さんも「これをきっかけに交流が進めば」と意気込んでいる。