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7日、輪島市の6小学校の入学式があった。1年2組担任の石田晴海さん(24)は教室の入り口に立ち、子どもたちを出迎えた。
新入生14人は玄関で保護者と離れ、6年生に手を引かれてくる。どの顔も緊張気味だ。石田さんは1人ずつ名前を聞き、「よろしくね」とハイタッチする。不安そうに周りをきょろきょろ見ていた子も、やっと笑顔になった。

教員3年目の石田さんが1年生を受け持つのは初めてだ。これまで担任した3、4年生は分からないことがあっても「給食当番はこうやってたよ」などと教えてくれたが、新入生はそうはいかない。
心強いのは3クラスある同学年の他の担任、1組の梯円華さん(24)と3組の直江秀真さん(25)が、どちらも同期ということだった。
初任校は石田さんが鳳至小で、梯さんは大屋小、直江さんは河井小。初年度に能登半島地震が起き、冬休み明け、間借り先の輪島高校で3人は顔を合わせた。以来、何でも相談し合える仲だ。
石田さん以外は1年生の担任経験がある。「トイレに行くタイミングを忘れがちだから、こまめな声がけが大事」「時計が読めない子もいるから長針の位置で伝えるといいよ」。2人の助言がありがたかった。
毎日、児童が笑顔で家に帰れるような学級を作りたい。教員になったときから心に決めている目標だ。
昨年の元日は輪島市の自宅アパートにいた。揺れが収まり、真っ先に浮かんだのは児童の安否だった。全員の無事を確認し、ほっとした。
翌月から6校合同で授業が始まり、他校の児童も加わって人数が増えたクラスで教える日々。混乱と戸惑いの中、子どもたちの変化を見逃すまいと必死だった。

気になる児童がいた。地震前から知っている鳳至小の子で、人なつこく「先生、聞いて」と話しかけてきたのに、6小学校に移ってからはおとなしい。「無理して気丈に振る舞っているのかな」。この時も同期の2人に相談し、さりげなく声がけをしてみよう、となった。
「大丈夫?」と聞けば、心配させまいと大丈夫なふりをしてしまう。被災した子どもたちには「大丈夫」の言葉も禁句だった。
「誰にも負けないと胸を張れる、自分のいいところはありますか」
7日の始業式で、冨水聡校長(57)が全校児童に聞くと、まばらに手が挙がった。石田さんも考えてみたが、手は挙げられなかった。「3学期の終業式までに自分のいいところを育てていこう」と呼びかけた校長の言葉を忘れずにいようと思った。
14人の子どもたちとの新たな一歩。不安も楽しみもある。「同期と支え合い、この先生ならついていけると1年生に安心してもらえるように頑張りたい」(若松花実)