【特集】大学入試改革に合わせて「個」の力を磨く新2コース制…神戸龍谷
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神戸龍谷中学校高等学校(神戸市)は2023年度、大学入試改革に対応して、6年一貫コースを新たに「エキスパートコース」と「アドバンスコース」の2コース制に再編した。並行して導入した「チーム担任制」や、3週間ごとに年8回行う「ブロックテスト」などの教育改革で、生徒の「個」の力を伸ばしていきたい考えだ。一貫コース長の武内悠祐教諭に、新コース制導入2年目を迎えた手応えを聞いた。
新たに「エキスパートコース」と「アドバンスコース」

同校は2023年度から、6年一貫コースに一般選抜での難関国公立大学・私立大学の合格を目標とする「エキスパートコース」と、総合型選抜・学校推薦型選抜入試など広い入試方式に対応する「アドバンスコース」の2コース制を導入した。前年度まで採用していた、理数教育に重点を置いて難関大学への進学を目指す「特進コース」と、英語教育を中心に展開して大学進学につなげる「英進グローバルコース」を再編したものだ。
一貫コース長の武内教諭は、「大学入試改革に伴い、入試で求められる力も変わりました。一般選抜だけでなく、総合型選抜や学校推薦型選抜に対応する学力プラスアルファの力を養うため、コースを再編しました」と、その狙いを説明する。
「エキスパートコース」は、国・数・英の3教科で先取り授業を実施することに特徴がある。これによって高2・高3で、大学入試用の演習時間を多く確保し、大学入学共通テストや2次試験への対応を図る。「アドバンスコース」は、基礎学力の定着を図る一方、プロジェクト型の学びで総合力を養う。これによって、一般選抜、総合型・学校推薦型選抜など幅広い受験スタイルに対応する学力を身に付ける。なお、中2~高2の進級時に、エキスパートコースとアドバンスコースを変更することも可能だ。
ただ、中1・中2の段階では、両コースともあえてカリキュラムに区別を設けない方針だという。「中1・中2は、学力の土台を固める時期であるため、両コースとも学習のペースをなるべく同じにしています。中3からは、学習の進度も深度も、各コースの目的に合わせていきます」
また、コース再編と同時に、中高で分かれていた校舎を、中1・中2生が「青谷学舎」、中3から高3が「本学舎」で学ぶ形にした。「中2までに基礎をしっかり身に付けて、中3からは高校生と同じ校舎で、進路を意識しながら学んでほしいとの思いです。高校生と同じ扱いにすることにより、自覚も芽生え、自習室を利用する生徒も増えています」と、武内教諭は語る。
「チーム担任制」を導入していっそうきめ細かい指導

新しいコース制では、エキスパートコースは定員20人の1クラス、アドバンスコースは定員30人の2クラスを設けている。同校ではこれまでも少人数制によるきめ細かい指導を行ってきたが、それをより一層充実させるため、23年度からは「チーム担任制」を導入した。
若手からベテランまでの教員6人が学年団を作り、3クラスの担任を一定期間ごとに交代して受け持つ仕組みとしている。「本校は若手の教員が多いのですが、チーム担任制になってから、他の教員の指導法を参考にしたり、先輩教員に相談しやすくなったり、教員自身の成長にもつながっています」と、武内教諭はその効果を語る。
教員間の情報共有は、定期的に行われるミーティングだけでなく、何か気付きがあり次第、休み時間などに行われるという。「この生徒にはこんな面があるなど、教員によって異なる見方をするので、新しい気付きを得られる機会が増えたように思います」。学年団に加わったある教諭は「以前は自分のクラスの生徒という認識だったが、自分の学年の生徒、自分の学校の生徒という見方ができるようになりました」と話す。
「チーム担任制」を導入してから、生徒たちの意識にも変化が生じているという。「生徒たちは、担任が誰かをあまり気にしておらず、学年団すべてが自分たちの先生だと感じているようです。学校行事などでも、これまでは担任主導でしたが、生徒主導に切り替わってきています」と、武内教諭は話す。
なお、保護者の相談窓口を担当する教員は決められているが、担任交代の都度、教員名は保護者にも伝えられ、どの教員とも気軽に相談できるようにしているそうだ。
「ブロックテスト」で学び残しを確実に防ぐ

新コース制導入に合わせて中1・中2を対象とするテスト改革も行われた。22年度までは定期テストを年5回実施していたが、23年度からは、そのうち期末テストを残して3回の中間テストを廃止した。代わりに実施しているのが年8回、3週間に1回の割合で実施している「ブロックテスト」だ。定期テストに比べて出題範囲は狭く、1教科あたりの試験時間も約30分と短い。
「単元を終えるたびにテストを行うので、こまめに習熟度と到達度をチェックできることが利点です。限られた範囲を短いスパンでテストすることで、しっかりと学力の定着を図ることができます」と武内教諭は話す。
出題範囲が狭いため、中間テストに比べて試験勉強の負担が少なく、生徒たちの取り組みも積極的だという。「ブロックテストで単元ごとに積み残しを防ぐ一方、期末テストで、もう一度これまでの復習をすることができます。短いスパンと長いスパンを組み合わせることにより、着実に学力アップを図れるようになりました」
ブロックテストを受けて理解不十分だった単元は、「フォローの時間」の学習で学び残しを防ぐ。フォローの時間は授業時間の中に週1ないし3コマ設けられており、生徒は復習したり、自学自習に取り組んだりして、苦手な単元を克服する。
「数学の因数分解や数列、英語の文法など、中1で学び残しがあると、高校生になって発展的に積み重ねていくのに時間がかかってしまいます。中1・中2でしっかり基礎を固め、中3以降に学力を伸ばしていくことが目的です。学力を伸ばすことにより、将来の可能性も広がります」と武内教諭は語る。
ちなみに同校は、浄土真宗本願寺派の教育機関を束ねる龍谷総合学園に属している。全国に保育所・幼稚園・こども園から大学・大学院までを擁する国内最大規模の学園グループで24法人・72校で構成されている。
「仏教精神を伝え、学力を中心とした総合力を伸ばすことが、本校の使命だと考えています。笑顔で優しい言葉を使える大人になってほしいと願っていますが、ニコニコしていても力がなければ人を助けることはできません。そのため、今後は、もっと生徒の『個』を伸ばしていきたい。龍谷総合学園のネットワークを生かして、大学の研究室訪問や、地域課題の解決を図るフィールドワークなど体験学習もより一層充実させたいと考えています」と武内教諭は抱負を語った。
(文・写真:石上元 一部写真提供:神戸龍谷中学校高等学校)
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