【特集】生徒議員の質問・提案で町を動かす「ハイスクール議会」…大妻嵐山

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  大妻嵐山中学校・高等学校 (埼玉県嵐山町)は1月25日、地元・嵐山町議会の議場で「ハイスクール議会」を開催した。高校生たちは「議員」となり、地域の課題解決や将来の町づくりのために一般質問や意見提出を行った。参加した生徒たちは地方行政への理解を深め、自分たちにも社会を動かす力があるということを実感できたという。榎本克哉校長と担当教員、参加した高2生たち(当時)に話を聞いた。

議員や役場の担当者と意見交換を重ねる

「議場で自分の考えをしっかり表現することができた生徒たちを大変誇りに思う」と語る榎本校長
「議場で自分の考えをしっかり表現することができた生徒たちを大変誇りに思う」と語る榎本校長

 「ハイスクール議会」の試みは、2024年初頭の賀詞交歓会で、榎本克哉校長と嵐山町議会の森一人議長が交わした会話から始まった。「高校生が地域行政の議会に参加して意見を出すという試みは、これまで他の地域でも行われていました。本校では、町役場と一体となり、実現可能な提案について真剣な討議を行いたいと考え、森議長と意見が一致しました」と、榎本校長は話す。

 「現在は、高校生も18歳で有権者になります。行政や議会の仕組みを理解し、探究的な学びを行うとともに、学校がある嵐山町の将来に向けた町づくりのために、自ら働きかける経験をしてほしいと考えました」

 まず、事前学習として昨年10月26日、森議長と佐久間孝光町長が来校し、町の現状や課題、議会の仕組みなどについて講演を行った。その後、校内でのポスター掲示や授業中の呼びかけによって募集を行い、高1生21人、高2生5人が参加することになった。

 「ハイスクール議会」を担当した地歴公民科の ()(じょう)(みつ)(あき) 教諭は、「初めての試みとあって参加者数の予想がつかなかったのですが、思っていたよりも多くの生徒が集まりました。公民に関心がある生徒以外も、仲間と共に学外の活動に参加するチャンスととらえたようです」と、手応えを語る。

 次いで翌月9日には、町議会の総務経済常任委員会、文教厚生常任委員会、広報広聴常任委員会の議員8人が同校を訪れ、意見交換会「議会カフェ」を開いた。町づくりや地域活性、教育、広報活動などについて生徒と直接話し合い、「ハイスクール議会」に向けてどのような一般質問や提案を行うかを検討した。

 その後、「行政機関訪問調査」として、生徒たちは希望に応じて1人または3~5人のグループに分かれ、同年12月16日から18日にかけて、嵐山町役場を訪問して関係部署の担当者らに聞き取り調査を行った。

 生徒たちは各自、一般質問の内容と意見書をまとめると、明けて1月18日、町役場に行って議員らと意見交換をして質問・意見内容の最終的な確認を行うとともに、議場でリハーサルを実施して当日の進行を確認した。

 これらの事前学習を指導した地歴公民科の (にい)(むら)(ゆず)() 教諭は、「普段はおっとりしている生徒も、町の抱える課題について議員さんや役場の担当者の方々から直接話を聞くことで、自分なりの考えを持つようになりました。本番に向けてオリジナルの議員バッジを作製し、気持ちがグッと引き締まったようです」と、生徒の変化について話した。

広報紙へのレシピ掲載やハチミツ商品の販売が実現

自分たちの質問や意見をまとめて壇上で発表する生徒(左端)
自分たちの質問や意見をまとめて壇上で発表する生徒(左端)

 本番を迎えた1月25日、第1回「嵐山町ハイスクール議会」が午後1時半から4時まで、町の議場で開催された。前半の「一般質問」では高2で生徒会長の戸巻七美さん(現高3)が議長を務め、実際の町議会と同じように開会を告げ、議事を進行した。「教員の働き方改革」「廃校の跡地利用」「嵐山産の食材を使ったレシピの掲載」など、事前に提出されていた一般質問に基づき、町役場の担当者らが答弁を行った。その間、町議たちは傍聴席で見学した。

 後半の「意見書提案」では高2の福田 (えい)() さん(現高3)が代わって議長を務めた。「嵐山町ミツバチボランティアと嵐山町とのコラボで町おこし」「嵐山に観光客を増やすためのPR動画コンテスト開催」といった意見が出され、その場で生徒議員たちによる採決が行われた。

 戸巻さんは、「議長席は一段高いところにあって、壇上ではとても緊張しましたが、森議長や町役場の方々のサポートのおかげで、無事に進行させることができました」とほっとした表情で振り返った。

 当日は議長を務めたが、戸巻さん自身もグループの仲間と一緒に「嵐山町産の食材を使ったレシピを町の広報紙などに掲載することは可能か」という質問を用意した。議会後は、実際に「広報らんざん」にレシピの連載を行うことが決まり、原稿の準備を進めているという。「ホウレンソウやサヤエンドウなど、嵐山町の特産品を使った、旬のレシピを載せるつもりです。将来は管理栄養士になることを目指していて、目標を実現させることに一歩近付いたように思います」

生徒たちが採決して提案した意見書(写し)
生徒たちが採決して提案した意見書(写し)

 高2で生徒会副会長を務める近藤もかさん(現高3)は、校内で行っているミツバチボランティアの活動と、嵐山町とのコラボについて提案した。議会後に町役場の人と話し合いを進めた結果、町の「千年の (その) ラベンダー園」で、学校が作ったハチミツやハチミツ入りの菓子を販売することになったそうだ。

 「普段の授業で発表を行う機会がたくさんあり、議会での発言にその経験を生かしたいと思いました。今回、私たちの提案が具体化しつつあることで、高校生でも真剣に話せば耳を傾けてくれる人がいて、大人の世界を動かすことにつながるのだと実感できました」

 初めての「ハイスクール議会」を終え、古城教諭は「SNSを利用して観光をPRするという、高校生ならではのアイデアを提案することができました。一方で、廃校跡地に道の駅を作るといった、予算の枠組みを考慮していない提案もありました。今回は生徒たちの考えを尊重しようとあえて口を挟みませんでしたが、次回はコストについて考える活動にしたいと考えています」と振り返る。

 榎本校長は、「地域の発展を真剣に考え、学校教育に進んで協力してくれる嵐山の町だからこそ実現できたことだと感じています。また、議場で自分の考えをしっかり表現することができた生徒たちを大変誇りに思っています」と話す。「大学の選抜方式が変化するなか、中高でさまざまな活動に取り組むことは、非常に重要になっています。進路はそれぞれでも、今回の取り組みを何かしらの形で将来に生かしてほしい。生徒たちのために、これからも『ハイスクール議会』を続けていきたいと考えています」と抱負を語った。

 (文・写真:足立恵子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:大妻嵐山中学校・高等学校)

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