【特集】心の核となる学びを求めて高大連携の医学部見学ツアー…湘南白百合
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湘南白百合学園中学・高等学校(神奈川県藤沢市)は8月7日、希望する生徒を対象に順天堂大学での「講演会+医学部見学ツアー」を実施した。同校は5月、同大と高大連携協定を結んでおり、進学後のミスマッチをなくしたいという大学側の希望と、人生の「核」となるような深い学びの場を与えたいという学校の願いが合致して実現した。当日の様子と同校の高大連携のビジョンなどを取材した。
本物の「医学の世界」にふれる見学ツアー

今回のツアーは、順天堂大学との高大連携がスタートして初めての企画で、中1から高3までの生徒に希望を募ったところ、医学に興味があったり、医学部進学を考えたりしている53人が応募。その中から年長者を優先する形で30人を選抜した。内訳は中3が8人、高1が12人、高2が8人、高3が2人だ。
8月7日に実施されたツアーのテーマは「こんなに楽しいの!?魅力いっぱい 医学の世界!」だ。午後1時から5時まで、教授による講演やSTEAM授業、キャンパス内見学ツアー、OGの現役順天堂大生との交流会など、充実した内容が繰り広げられた。
ツアーのプログラムは、医学部の冨木裕一教授による「あなたにとってのVital signs」という講演で始まった。大教室に集まった生徒たちを前に、冨木教授は、女性医師の働き方、ライフデザインの現状などについて説明。生徒たちは、頷きながらメモを取り、熱心に聞き入っていた。最後に冨木教授は、「あなたがたに医師になる覚悟はありますか」と問いかけ、「今の自分には何が足りないか考えて。今頑張んなきゃいつ頑張るの。できるだけ早く目標を決めましょう」と講演を締めくくり、盛んな拍手を浴びていた。

続いて生徒たちはキャンパス内のセンチュリータワー17階にある「日本医学教育歴史館」を見学。展示されている本物の「解体新書」に興味深そうに見入っていた。さらに、現役の医学部生がトレーニングする「メディカルテクノロジー&シミュレーションセンター」で、人体そっくりな感触の「アン人形」を使った胸骨圧迫の蘇生トレーニングや気管挿管に挑戦したり、腹腔鏡手術のVRシミュレーター、医療ロボット「ダビンチ」など、さまざまな医療トレーニングを順番に体験したりした。
どの生徒も表情は真剣そのもの。頬を紅潮させながら胸骨圧迫に取り組んでいた生徒は、大学スタッフに「その調子、上手よ!」と褒められると、大きく息を吐いてにっこり笑った。
頭を柔らかくして症例を名付けるプログラムに挑戦

ツアーの後半は、同大STEAM教育研究会「MEdit Lab」代表で病理医の小倉加奈子医師によるSTEAM授業に参加した。小倉医師は、生徒たちに「病歴、家族歴、既往歴と、カルテには『歴』という漢字が多いです。医学×歴史という視点から、症例に新しい病名を付けましょう」と出題。10分間のシンキングタイムのあと、生徒たちはそれぞれのスマートフォンから回答を寄せた。その中に、スマートフォンが手放せないという症状に対して「スマホリック」と名付けた回答があり、小倉医師は「音感もよくてセンスがいい」と評価していた。
ツアーの最後には、小倉医師と同研究会主任研究員の
参加した高3の中澤麻央さんは、「STEAM授業では、誰もが経験したことがある名前のない症状に病名を付ける体験をして、医学について楽しみながら学ぶことができました。冨木教授の講演では、自分が今頑張ることの大切さを教えていただいたので、夢をかなえられるよう精一杯努力し続けたいと思います」と話した。
中3の松下
20年後、30年後に「心の核」になるような学びとの出会いを

順天堂大学だけでなく、同校は今年度、上智大学及び北里大学とそれぞれ高大連携協定を結んだ。さらに、お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所との連携、東京理科大学とのインターンシップと、矢継ぎ早に協定を結んでいる。
この動きについて広報部長の水尾純子教頭は「学校推薦枠など大学入試でのアドバンテージを狙ったものではありません。私たちが高大連携に求めていることは、本校が掲げるグランドデザインに結びつくかどうかです」と話す。グランドデザインは、生徒が高校を卒業するまでに身に付けてほしいと同校が考える7項目の資質・能力だ。
たとえば順天堂大学の場合、7項目のうち「理数系の充実した学び」と「進路実現のための支援」に結び付く大学と判断し、連携のため数か月間の協議を重ねてきた。

一方、同大医学部医学教育研究室の小川

学習支援部長で数学担当でもある岩瀬有子教諭は今回の高大連携の意義についてこう話す。「本校の生徒の中には、『将来は医師になりたい』と中学入学時から進路を決めている子も少なくありません。しかし、たとえば、高大連携の授業研究のために、東京学芸大学の先生が来校され、それがきっかけで学びの姿勢が変わってきたり、数学なら『なぜ?』という問いが自分で立てられるように発展したりすることもありました。今回の高大連携プログラムは、自分の志望や資質が本当に医師に適しているのか、自ら問い直す機会になったのでは」
水尾教頭は「高大連携の大学見学ツアーや、今回のような企画は、ただ目先の受験のためだけではないのです。学校の教員以外の大人たちと関わり、自分たちを応援してくれる人々と出会うことこそが高大連携の利点でしょう」と語る。「人生における核になるような深い学びに出合えて、20年後、30年後に、『あのとき、こんなことを教わったな。こういうことだったんだ』と思い出したり、気付いたりすることになればいいと思います」
(文:田村幸子 写真:中学受験サポート)
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