●白山、当時17歳
群馬県藤岡市の関越自動車道で2012年に乗客7人が死亡し、38人が重軽傷を負った高速ツアーバス事故は29日で発生から13年となった。「くる、今年もみんなで来たよ」。事故で命を落とした白山市の岩上胡桃(くるみ)さん=当時(17)=が眠る同市内の墓には同級生が訪れた。「高校生やった私らが、もう30歳やよ」。友人たちは流れた歳月に思いを巡らせ、冥福を祈った。
「無事、集まることができたよ。ありがとう」。胡桃さんの墓には午前11時ごろ、小学校の同級生4人が訪れ、花や線香を供えた。それぞれ仕事や家庭を持ち、全員で集まる機会は少なくなったが、胡桃さんの命日には、必ず墓前で手を合わせているという。
当時、高校3年生だった前田明香(はるか)さん(30)=白山市=は現在、薬剤師として働く。胡桃さんが看護師を目指していたことを覚えており、「くるの分も頑張りたい。見守っていてね」と語りかけた。
●「現実受け止めたくない」 父・剛さん
胡桃さんの父剛さん(53)は発生時刻の午前4時40分ごろに合わせて事故現場を訪れ、「何年たっても、一生忘れない。現実を受け止めたくない気持ちが消えることはない」と語った。
現場となった藤岡ジャンクション付近の斜面下に設けられた献花台には、白色や桃色の花が供えられ、剛さんら遺族が犠牲者を追悼した。
剛さんは何度もまな娘の成長した姿を想像するといい、「どんな大人になっとったんやろ、見たかった…」と声を絞り出した。命日の墓参りを欠かさない同級生に、「娘のことを忘れずに来てくれることがうれしい。ありがたい」と感謝した。
●母犠牲の山瀬巡査長「自分が事故を防ぐ」 能登町出身、群馬県警
能登町出身で群馬県警高速隊の巡査長山瀬俊貴さん(32)は母直美さん=当時(44)=を亡くした。「これからも家族を見守ってほしい」と話し「残酷さを知る自分が事故を防いでいきたい」と誓った。母郁子さん=当時(49)=を失い、自らも重傷を負った高岡市の林彩乃さん(36)は、運転手ら多くのバス事業者に対し「人を運んでいる意識を常に持ってほしい」と求めた。
バスは金沢市から高岡市を経由し、千葉県の東京ディズニーリゾートへ向かっていた際、防音壁に衝突した。
石川県内では、岩上胡桃さん、山瀬直美さん、松本智加子さん=当時(29)、木沢正弘さん=同(50)=の4人が犠牲となった。