<EYES> 共創プロデューサー 宮田裕章さん 万博で アート巡り共鳴体験
2025年5月9日 05時05分 (5月9日 09時54分更新)
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。私がプロデューサーを務める「Better Co-Beingパビリオン」では、来場者が一期一会のグループを組み、アート作品を巡りながら共鳴体験を味わう。今回はパビリオン内の作品を二つ紹介する。
一つ目は「人と人との共鳴」をテーマにした塩田千春の「言葉の丘」だ。小高い丘の上に幾重にも張り巡らされた赤い糸と、線で形作られた机と椅子が浮かび上がる。塩田は「記憶」「存在と不在」「つながり」といった概念を探求し続けてきたアーティストで、糸という素材は時に不安や孤立といった内面的な感情も暗示する。同時に記憶や思考が重層的につながり、新たな理解へと至る可能性も提示している。
Better Co-Beingとは、「未来に向かって共に生きるあり方」を模索する問いであり、言葉の丘は、その問いかけを詩的かつ空間的に表現している。
二つ目は「人と 世界の共鳴」をテーマにした宮島達男の「Counter Voice Network-Expo 2025」。なだらかなスロープを下りる中で、さまざまな声と言語、異なるリズムの「9、8、7、…1」というカウントダウンが鳴り響く。音に近づくと、その言語を話す人々が大切にしているモチーフがスマートフォン上に現れ、自分と他者の生きている時間が地続きであると気づかされる。
カウントダウンは「0」を発せず、その瞬間に訪れる静寂が「無」や「死」を想起させる。それが同時に「新しい何かが生まれる前の余白」でもあるように感じられるのは、「生命の連続性」と「共鳴」を感じさせる作品の力ゆえだろう。
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