和歌山県南紀のニュース/AGARA 紀伊民報

2025年06月30日(月)

カツオ一本釣り漁船復活 和歌山県田辺市芳養松原の濱中さんが挑戦

多くの人でにぎわうカツオの一本釣り漁船「第七若宮丸」の進水式(5日、和歌山県田辺市芳養松原1丁目で)
多くの人でにぎわうカツオの一本釣り漁船「第七若宮丸」の進水式(5日、和歌山県田辺市芳養松原1丁目で)
カツオ一本釣り漁船を新調した濱中健宏さん
カツオ一本釣り漁船を新調した濱中健宏さん
 和歌山県田辺市芳養松原1丁目の濱中健宏さん(40)が、カツオの一本釣り漁船を新調した。地元ではかつて、カツオの一本釣り漁が盛んで、いつか復活させたいと考えていたという。「伝統を絶やしたくないという思いがあった。(漁が)うまくいって、地域を活気づけられるといい」と話している。


 「第七若宮丸」と名付けた漁船は総トン数9・1トン、全長約12メートル。中古船を購入し、計器類などを新たに取り付けた。準備が整い次第、漁に出る予定で、濱中さんは「6月までには始めたい」と話している。

 新芳養漁港を拠点にする。濱中さんによると、地域で新しいカツオ一本釣り漁船ができたのは約半世紀ぶりになるという。

 芳養地域は、カツオ一本釣り漁の拠点だった。「芳養町誌」(2005年4月発行)によると、「芳養浦」は江戸初期の文献にも記されている。遅くとも明治期にはカツオ一本釣り漁があった。昭和期の漁期には、かつて砂浜だった現在の新芳養漁港付近で、大量に水揚げされた。

 濱中さんは、祖父が漁師で、こうした地域の歴史や「カツオ漁は面白い」という古老の話を聞いていた。高校卒業後に地元の企業で約8年働いた後、カツオ一本釣り漁を手がける高知県の会社に転職。10年余り大型漁船に乗り、鹿児島県沖から三陸沖までカツオを追い求める日々を過ごした。船長も務めた。

 「小さな漁船でもいいから自らの手で復活させたい」と、22年12月に帰郷。親族のシラス漁を手伝いながら過ごし、24年に和歌山南漁協の組合員になった。

 「群れを探す時間は長いが、良い群れに当たると全員が一丸になるし、アドレナリンが出る」とカツオ一本釣り漁の魅力を語る。事業が軌道に乗れば、以前のように各地へカツオを追いかけていきたいと抱負を語る。

 第七若宮丸の進水式が5日、新芳養漁港であった。神事の後、餅まきもあり、多くの人でにぎわった。