世界的に厳しい暑さとなった2023年夏。土壌の再生と地球環境の問題克服に向け、酒類のリーディングカンパニーはこの分野で先陣を切るプラットフォームと手を結んだ。

モエ ヘネシーCEOのフィリップ・シャウス氏。
2023年5月、パリのグランパレ・フェルメールで開催された「チェンジナウ」。地球問題の解決策を提案するこの世界最大規模のイベントに、モエ ヘネシーが参加した。モエ ヘネシーといえば、シャンパーニュのモエ・エ・シャンドン、コニャックのヘネシーを中核に、ドン ペリニヨン、ルイナール、クリュッグなど数多くのブランドをもつワイン&スピリッツのリーディングカンパニーである。同社がこのイベントに参加した理由を、CEOのフィリップ・シャウス氏はこう述べる。
「私たちにとって"Living Soils(生きた土壌)”は、製品の質とサステナビリティーに不可欠な要素です。スタートアップから大企業まで多くの組織が集まり、地球問題の解決策を探るこのイベントを通して、土壌の保全や再生にともに取り組みたいと考えました」
イベントではモエ・エ・シャンドン、ルイナール、ヘネシーが独自のエキシビジョンを展開していたが、そのひとつ、モエ・エ・シャンドンの「ナチュラ ノストラ」と名付けられた生物多様性のプログラムについて紹介しよう。

左:モエ ヘネシーのサステナビリティー部門最高責任者を務めるサンドリーヌ・ソメール氏。 右上:「Women for Change」をテーマにしたディスカッションでは、パネラーとしてヴーヴ・クリコ社長のジャン・マルク・ギャロ氏が立ち、同社での女性登用についても語った。 右下:モエ ヘネシーの「Living Soils, Living Together(生きた土壌で、ともに生きる)」プログラムを説明するソメール氏。
まず、大きな柱のひとつが「生態系コリドー」。これは動植物が移動しやすいよう、既存の森林や緑地の間をコリドー(回廊)でつなぐこと。2027年までに長さ100キロのコリドーを作る計画となっている。
もうひとつは「再生農業」。自然界への人間の介入を見直して生態系のバランスを図り、より調和した環境を整える。それにより病虫害の発生を抑え、土壌構造を改善し、土地の保全を高めることが可能という。
ほかにも、土壌に有機物を供給するカバークロップの推進、ヒツジに雑草を食べさせるエコ放牧、受粉の媒介者であるミツバチの巣箱の設置などが進められているそうだ。
また、このイベントのパネルディスカッションには、モエ ヘネシーの経営陣も登壇。「Women for Change」のセッションではヴーヴ・クリコのジャン・マルク・ギャロ社長がパネラーのひとりを務め、「女性の地位向上が組織のためになることを理解すべき」と語った。