この1年、ラグジュアリーホテルの新規オープンやリニューアルが相次いだ。歴史を刻むクラシックホテルが引き継ぐ究極の美オムレツや、都心が一望できるファインダイニングでのぜいたくメニューなど、至福の朝が迎えられる5つの宿の朝食をお届けする。
歴史を引き継ぐ正統派の「美肌オムレツ」
万平ホテル

有形文化財を改装。雰囲気を残しながら窓の桟(さん)を大きくして採光を増やすなど工夫した(万平ホテル)
観光客でにぎわう長野県の旧軽井沢銀座通りを抜けた別荘地らしい木立の中に建つ「万平ホテル」。初代の佐藤万平が明治時代、宣教師など外国人にも宿を提供しようと開いた「亀屋ホテル」(1894年開業)にまで遡り、数多くの国内外の要人、文化人をもてなしてきた。「ジョン・レノンが万平ホテルのアップルパイとミルクティーを愛した」という逸話は有名だ。
この地に「万平ホテル」が移転したのは1902年。現在のハーフティンバー風の外観や和洋折衷の室内装飾の建物は1936年に建ち、2018年には国の登録有形文化財となった。創業130年を機に大規模改修を施し、2024年10月2日のグランドオープンで再び美しい姿を見せた。

まるで美肌のようなオムレツにシェフが選んだ軽井沢のソーセージやベーコンなども添えて(万平ホテル)
江戸から昭和初期の軽井沢を描いたステンドグラスが美しいメインダイニングルームは、正統派のフランス料理。ソースをはじめ100年引き継ぐ伝統のレシピもあるという。朝は庭を望むダイニングテラスの席が心地よい。
オーダーしたのは、大正時代から使われた絵柄のメニューカードに書かれた「アメリカンブレックファスト」。まず信州産のリンゴジュース、シャキッとした野菜のサラダ、フルーツが運ばれる。食器には別荘地が「ハッピーバレー(幸福の谷)」呼ばれた当時の花畑、スズランの絵柄が描かれている。
選んだオムレツの、美肌のような艶やかな焼き上がりに驚きつつ、ナイフを入れると中はとろとろ。口の中に広がるのはバターやクリームではなく、薄口のだし巻きを思わせるような味わい。添えられた野菜やハム、ベーコンがオムレツの上品な味わいを引き立てる。
ホテルメイドのジャムもフルーツの味が立ってすこぶるおいしい。メイプルシロップでいただくフレンチトーストもファンは多いが、まず何をおいてもこれぞクラシックホテルの正統派オムレツを味わってほしい。アメリカンブレックファスト5000円(税サービス料込・外来可)。
改装した全86室の客室は伝統工芸や組子格子などのデザインを踏まえつつ、和洋折衷のインテリアがクラシックな「アルプス館」、現代的なデザインと全室に天然温泉のバスを導入した「愛宕館」、テラス付きの客室も備えた「碓氷館」の3棟。落ち着きのある空間で過ごせば、満ち足りた朝食が味わえる。