上等そうなスーツを着ているのに、なぜかだらしなく見える。会社の上司や商談相手に対して、そんなふうに感じたことはありませんか? 多くの場合、スーツが体にフィットしていなかったり、コーディネートがチグハグだったりするというのが理由です。ただ、それ以前に装いの基本的なルールが守られていないのが原因ということも多いのです。
たびたび「残念すぎる」と物議を醸す我が国のトップの着こなしも、ここに起因していることが多いような……。人のふり見て我がふり直せではありませんが、ひょっとしてアナタ自身も、知らないうちにルールを逸脱したスーツの着こなしをしているかもしれません。そこで今回はいつもと趣向を変え、気鋭のスタイリスト、四方章敬(しかたあきひろ)さんに、好印象を築くために、守るべき装いのルールについて聞きました。
記事の最後に、春夏のノータイ姿を美しく見せたいときに、特に気にすべきポイントについて四方さんが解説する動画も掲載しています。こちらもぜひご覧ください。
ジャケットのボタン、全部留めはNG
今回お邪魔したのは、ブルックス ブラザーズ 表参道(東京・港)。ここのアイテムを四方さんが着用しながら、装いのルールを守ったときと、そうでないときとの印象の違いを解説していきます。ブルックス ブラザーズといえば、ご存じアメリカントラッドの殿堂。この企画にはもってこいの場所といえましょう。
四方さんは見落とされがちな装いのルールとして、まずは上着の「アンボタンマナー」をあげました。
「男性のテーラードジャケットは、フロントのボタンをすべて留めるようにデザインされていません。標準的なシングルジャケットには2つボタンと3つボタンタイプがありますが、どちらも一番下のボタンは飾りで、必ず外しておくのが鉄則。これがアンボタンマナーです。若い方だけでなく、年配の方でも意外とここが守られていない人をよく見かけます」
日本の中学や高校では、制服のブレザーのボタンをすべて留めるという謎のルールを設けているところも多く、そのせいか「全部留めることが正しいと認識している人も多いようだ」と四方さん。

フロントのボタンを全部留めるとどこかやぼったい印象に……。一番下のボタンに引っ張られて見苦しいシワも入ってしまいます
「すべてのボタンを留めると、服に着られているような雰囲気になるだけでなく、実際にジャケットのシルエットが崩れてしまうんです。生地が突っ張って余計なシワが入ってしまうこともありますし、足さばきにも影響が出ます。その点、一番下のボタンを外せば、腰からヒップにかけてのラインがきれいに広がり、ウエストのくびれも生まれます」
「3つボタンジャケットの場合、上のボタンも外すのが正解です。以前は上2つ掛けを前提とするデザインのものもありましたが、現在は3つボタン段返りと呼ばれるタイプが主流で、真ん中のボタンを留めたときに襟のロールが一番美しく出るようデザインされているんです」

主流の3つボタン段返りのジャケットは、真ん中のボタンだけ留めるのが正解です